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加藤宏子展 関連事業 ミュージアム・コンサート
加藤宏子氏とマルタン・グレゴリウスがクロストークを行いました

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第2回本郷新記念札幌彫刻賞受賞記念
加藤宏子展 関連事業 ミュージアム・コンサート
加藤宏子氏とマルタン・グレゴリウスがクロストークを行いました

第2回本郷新記念札幌彫刻賞受賞記念
加藤宏子展 関連事業 ミュージアム・コンサート
Kitara専属オルガニスト チェンバロ コンサート


 2018年5月26日(土) 14:00〜14:40
 演奏/マルタン・グレゴリウス
   (札幌コンサートホール第19代専属オルガニスト)
 会場/本郷新記念札幌彫刻美術館本館
     公式HP http://hongoshin-smos.jp/
 料金/入場無料(※但し、当日の観覧券が必要です)


加藤宏子、マルタン・グレゴリウス クロストーク
彫刻と音楽が響きあう場で


札幌彫刻美術館でのミュージアムコンサートにちなんで、彫刻家加藤宏子と、
札幌コンサートホール専属オルガニストのマルタン・グレゴリウス、ふたり
のアーティストが彫刻と音楽をめぐって語り合いました。

彫刻と音楽の差異と共通点

マルタン 大通交流拠点地下広場(地下鉄南北線大通駅コンコース)に設置
     されている加藤さんの彫刻作品「improvisation〜受けとめるか
     たち」(第2回本郷新記念札幌彫刻賞受賞)を観ました。まず不
     思議な造形に惹かれました。これは花かな? いやどこか海のよう
     にも感じる、と思いました。タイトルも興味深かった。そして、
     これはいったいどのように作られているのだろう? と不思議にな
     りました。

加藤   海を感じていただけたのは、とてもうれしいです。工程では、ま
     ず建築に使う断熱材(発泡ポリスチレン)を、電気で加熱したニ
     クロム線で削って型をつくります。構想に基づいて手を動かして
     いきますが、やり直しの効かない一発勝負ともいえます。その上
     に、楮(こうぞ)という、和紙の原料になる木の繊維を水などに
     溶いたものをすくって重ねていって、できあがった時点で型をは
     ずします。繊維は、漂白しているので真っ白です。のりは使いま
     せん。奈良の正倉院には千年以上前の和紙の巻物などが残されて
     いますが、のりを使わなければ和紙は劣化しないのです。
     賞(本郷新記念札幌彫刻賞)の審査はマケット(縮小模型)で行
     われ、大通に設置された本制作ではその10倍の大きさのものをつ
     くりました。一般に彫刻では、重力に逆らって上に広がるような
     造形は難しいものです。でもこれは上に広がって、長さは4メート
     ルにもなります。内部に針金を入れていますが、まず繊維が絡み
     合うことで十分な強度が生まれるのです。

マルタン 見る人にさまざまなことを瞑想させるような作品だと思いました。
     気持ちが浄化されていくような力も感じました。

加藤   さまざまな人が行き交うパブリックな場に作品を据えることには、
     いろんな意味や可能性があると思います。私はこの作品を、心の
     悩みを受けとめる手や器のように感じてくれてもいい、と思って
     います。

マルタン 私は演奏では即興(improvisation)も重視するのですが、加藤さ
     んはいかがですか?

加藤   はい、型を作るときも楮を重ねるときも、手の動きは瞬間瞬間の即
     興だと思います。私はかつては素材に石を使っていました。重くて
     硬くて、高価だし、道具も大変でした。そして、失敗するとものす
     ごい損害です(笑)。だから構想を図面に起こして、それをきっち
     り正確に再現することに神経をつかいました。でもそれだと、満足
     のいくものがなかなかできませんでした。あるとき、作りかけのも
     のを壊してみました。それが意外に良かったのです。そのときか
     ら、大枠の構想は重要ですが、即興性を大事にしようと思うように
     なりました。音楽もきっと同じですよね? 作品の楽譜は大事だけ
     れど、それを単に正確に再現するだけではその人らしい演奏にはな
     らないのではないでしょうか。

マルタン はい、とりわけルネッサンスやバロックの時代では、演奏者に即興
     的な技術が求められました。でも演奏は生まれる瞬間から消えてい
     くものなのに対して、彫刻は物理的に末長く残ります。制作にも長
     い時間がかかる。その違いにも興味を惹かれます。

札幌彫刻美術館を異質な空間に

加藤   5月26日のコンサート(本郷新記念札幌彫刻美術館本館)では
     チェンバロを弾くのですね? 即興の演奏もしますか?

マルタン はい。チェンバロの表現力を皆さんに感じていただきたいと思って
     います。チェンバロが盛んに弾かれたルネッサンスやバロックの時
     代には、奏者なりの装飾音や即興演奏が重視されていました。当日
     のプログラムではまず、16世紀の舞踊のための作品や、17世紀に
     ポーランド(グレゴリウス氏の祖国)の譜面がイタリアの作曲家に
     よって編曲されたもの、イタリア音楽の影響を受けたドイツの作品
     など、オルガンやオーケストラの曲をチェンバロ用に編曲されたも
     のをお聴きいただきます。いずれも即興の要素が重要です。これは
     私がKitaraでのデビューコンサートで弾いたものですから、パイプ
     オルガンとチェンバロの違いを意識することができるかもしれま
     せん。そして最後の曲は、フランスの舞曲をもとにした、まったく
     の即興演奏になります。加藤さんの作品が並ぶ展示室で、私が受け
     るインスピレーションのままに奏でてみたいと思います。

加藤   そうですか! 作品の展示は、会場の空間が触発するものと呼応す
     る、インスタレーションのようにしたいのです。その意味で、即興
     的な展示といえるかもしれません。実は皆さんにご覧いただく作品
     には現在まだ制作中のものもあります。今日は先ほど大ホールで、
     古典から現代曲まで3曲のオルガン演奏を聴かせていただきまし
     た。どれもとても刺激的でした。その体験と、いまこうして話をし
     ていることが、これから仕上げていく作品に影響を及ぼしていくと
     思います。

マルタン 大通にある「improvisation〜受けとめるかたち」とはちがう雰囲
     気の作品も展示されますか?

加藤   はい。大通の作品は明るさや美しさを探究するようなものですが、
     ちょっと暗かったり、怖いようなものもあります。素材や手法は共
     通していますが、その意味で表現の幅を楽しんでいただきたいと思
     います。

マルタン 加藤さんの作品に囲まれて演奏することがとても楽しみです。コン
     サートは、色や形に音楽を感じたり、逆に音楽に彫刻のような形を
     感じる、いわゆる「共感覚」を刺激するようなものになれば良いと
     思います。

加藤   彫刻と音楽が交わったり響き合うことで、非日常的で異質な空間が
     立ち上がると良いですね。私も本当に楽しみです。

(2018.03.26 札幌コンサートホールにて)
通訳/平岡 智成  取材・執筆/谷口 雅春